彼が趣味で初めてフライングウォッチを作った時のことを覚えている人はいるだろうか。
IWCはこのほど、超音速航空機の開発を専門とするBOOMSupersonic社との新たなパートナーシップを発表しました。 ブランド自身の言葉によると、このパートナーシップは超音速飛行の新時代を切り開くものであり、もう一つは、ブランドの開発に影響を与えてきた飛行への情熱です。
超音速というと、それまであまり知らなかった私を含め、ほとんどの時計メーカーはまず戦闘機を思い浮かべるだろうが、IWCの新しいパートナーの研究開発の方向性は完全に民間機である。 BOOMSupersonic社独自の例では、サンフランシスコから中国までの飛行時間は現在11時間ですが、超音速機によって6時間に短縮され、実際の移動時間が2日短縮されるとのことです。
今回、IWCが発表した新たなパートナーは、この分野の最先端を行くBOOMSupersonicだけでなく、AirSpeederや、民間人による宇宙ミッションの先駆者であるInspiration4も含まれています。 例えば、超音速旅客機は、熱安定性カーボン複合材の機体部品などの新素材の使用拡大や、3Dプリンターなどの新しい成形技術の適用が挙げられます。
世界初の電動空飛ぶレースカーブランド「AirSpeeder」は、スポーツカーのデザインとレーシングドローンを融合させ、最先端のカーボン複合素材に加え、電気自動車のバッテリー技術やレーダー安全装置などを応用し、SF映画のようなエアレースを実現したものです。
そして、世界初の民間宇宙軌道ミッション「Inspiration4」は、SpaceX社のドラゴン宇宙船に頼って宇宙へ行き、地球を3日周回する軌道を達成するものでした。
左：ルドルフ・フンボルト、当時のIWC代表エルンスト・ヤコブ・フンボルトの息子で、スイス空軍に所属していた人物
右：1936年に発表されたIWC初の「パイロット・ウォッチ」。
今年のこれらの新しいコラボレーションは、IWCとメルセデスAMGのこれまでのコラボレーションよりも、IWCにとって馴染みの深い航空分野をベースにしています。当初、当時の代表であったエルンスト・ヤコブ・フンボルトの2人の息子の飛行趣味から生まれたIWCの航空時計も、今では航空宇宙分野とともに、優れたエンジニアリングの追求を原点とすることができるようになったのです。 また、エンジニアリングの卓越性を追求することが出発点であり、革新的な技術が共同協力の接続点となるのです。
革新的な素材
IWCと航空宇宙産業のコラボレーションのキーワードは、革新とテクノロジーです。そこで、IWCの素材とパフォーマンス技術の探求についても触れておきましょう。 革新的な素材はそれぞれ独自の特性と利点を備えているため、時計に求められる厳しい条件を満たしながら、見た目も美しい素材を見つけることは、常にIWCのエンジニアリングの中核を成してきました。 ブランドが採用する数多くの革新的な素材の中で、セラミックは最も象徴的な存在です。
IWC初のセラミックウォッチは1986年に誕生しました。これは、私たちがしばしばラドー初のセラミックウォッチと呼ぶものと同じ年ですが、興味深いことに、ラドーの高精度セラミックウォッチ「インテグラル」はブレスレットにセラミックを使用しており、IWCのダヴィンチ パーペチュアル カレンダー（モデル3755）はセラミックケースを採用しています。
展示されたIWCのセラミックケース製造工程
時計に使われるセラミックは、粘土を焼いて作る従来のセラミックとは全く異なり、硬度が高く、傷や腐食に極めて強いことで有名なハイテクセラミック、あるいはニューセラミックと呼ばれるものが使われています。 この粉末を他の副資材とよく混ぜ合わせると、成形され、その後、窯の中で高温で焼結される。
セラミックが誕生して30年以上が経ちますが、時計の分野ではいまだに革新的な素材と呼ばれています。 それは、この素材にはさらなる可能性、つまり研究開発の余地があり、時計分野だけでなく自動車、航空宇宙工学、医療などさまざまな分野でこの素材の将来性が模索されているからだと個人的には考えています。
カラフル
パイロット・ウォッチ TOPGUN 海軍航空隊 クロノグラフ “モハベ・デザート” スペシャル・エディション（モデル IW389103）
2007年、IWCはパイロット・ウォッチのサブコレクション「トップガン」を発表しました。このコレクションは、常に技術的に高度な「リストピース」としてパイロット・ウォッチ・コレクションに位置づけられています。 最も厳しい気候条件に対応しなければならない時計の素材選びでは、堅牢で耐腐食性に優れたチタンやセラミックなどの革新的な素材が採用された。 この2年間で、TOPGUNコレクションがセラミックを率先して採用し、IWCもセラミックを次のレベルに引き上げ、カラー展開に力を注いでいます。
ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン 海軍航空隊永久カレンダー「モハベ砂漠」特別版 (Ref: IW503004)
2019年にTOPGUN “Mojave Desert” Special Editionコレクションを発表して以来、フライトウォッチのタフさに合わせ、砂色のセラミックを用いたミリタリースタイルで、カラーセラミックはブランドの素材選びの新しい方向性として定着しています。 ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団のための特別モデルとして、同財団のアイコンであるブルーをセラミックで表現したモデル、そして海軍の飛行隊「ブルーエンジェル」とコラボレーションした特別モデルとして、ブルーとイエローの配色で異なる生命力を表現したブルーセラミックの第2弾が登場します。 色付きの陶磁器は、視覚的にも優れていると言わざるを得ません。
パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “ブルーエンジェル” スペシャル・エディション（モデル IW389109）
写真：Watch House
このカラーセラミックの製造工程は、従来のセラミックと大きな違いはありませんが、ジルコニアと他の金属酸化物をいかに混ぜ合わせるか、原材料の純度を確保するかに重点を置いた、より厳しい製造工程となっています。これにより、IWCのカラーセラミックは、色が陽性であることはもちろん、実際に手にしたときの色も均一なものとなるのです。 IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ
IWCパイロット・ウォッチ・クロノグラフ “INSPIRATION4 “スペシャル・エディション
ホワイトセラミックにダークブルーの星空文字盤、多くの時計愛好家が一度見たら絶賛の嵐で、私個人も最も美しいパイロットウォッチと言いたいところですが、公益事業ということで現在販売されていないのが残念です。 IWCのホワイトセラミック時計は、最初のダ・ヴィンチのセラミック時計から採用されており、ホワイトセラミックはカラーセラミックとはみなされませんが、セラミックの純度を示すには最適な色です。
1つの材料で複数の特性を持つ
IWCTOPGUN ポーセリン・チタニウム・ワールドタイマー（モデル：IW395505）
どのブランドも、より高い温度とより多くの添加物によってセラミック素材を変化させる方法に苦心している中、IWCはセラミックの特性に着想を得て、それを拡張して磁器化チタン「セラタニアム」を製造するという革新的な視点に立ちました。 他のブランドが採用している物理的な手法であるPVDコーティングとは異なり、IWCは特殊な化学反応によってチタンの表面を変化させ、チタンの軽さと強度、セラミックの温かみと耐傷性を備えた新しい特許素材を作り出しました。
見た目だけではありません
ポーセリン・チタン・パーペチュアル・カレンダー（モデルIW395505）に搭載された52615ムーブメント
IWCのウッドペッカー巻上げ機構は、別名バイルトン巻上げ機構とも呼ばれ、巻上げ効率の良さで有名ですが、初期のバイルトン部品には耐摩耗性の問題があり、2012年にIWCが耐摩耗性の高いセラミック製ムーブメント部品を製造して、この問題を完璧に解決しました。
革新的なパフォーマンス
大型パイロット・ウォッチ「SHOCKABSORBERXPL」（モデル：IW357201）。
永久カレンダー、コンスタントフォース（定力装置）付きトゥールビヨン、南北に伸びるムーンフェイズなど、IWCの複雑機構について語りたいことは山ほどありますが、最も革新的な技術開発は、今年の時計フェアで発表された大型の「パイロット・ウォッチ・ショックアブソーバーXPL」でしょう。 従来のショックアブソーバーは数百から千程度のものが一般的でしたが、XPLは3万gの重力加速度に耐えるテストを行っており、IWCの耐衝撃性は本当に強いということが大きなポイントです。
このXPLは、従来のムーブメントの軸受にある小さな金属片のショックアブソーバーとは全く異なります。 このように分解されたデザインの時計からは、ムーブメント、文字盤、ケースをつなぐフレームのような、非常に明るい金色の部品が文字盤内部に直接見えるのです。 片持ちバネ構造により弾力性が大幅に向上し、衝撃時にクッションとしてムーブメントを保護するほか、航空宇宙分野で使用されるハイテクアルミニウム合金ブリッジを組み合わせることで、自重を軽減して高い剛性を確保し、時計全体の耐衝撃性を高めています。
IWCとこれらのパートナーは、時間とスピード、航空宇宙と飛行を通じてつながっており、IWCの革新的な技術開発の優れた能力によって、このパートナーシップは強化されているのです。 また、常に研究開発を続ける時計ブランドにとって、イノベーションは工学のロマンを示す最良の方法であると私は理解しています。
IWCにとって、1つあれば2つあります。例えば、9月にローレウス・スポーツ・アセンブル・カラーセラミックケースを発表した直後にブルーセラミックを発表し、その後「ブルーエンジェル・スペシャル・エディション」を発表しました。素材の革新という点では、その後もケースに純白セラミックを使用し続けるか、あるいはカーボンファイバーのように異なる分野の新しい技術を時計に取り込んでいくか、すでに使用されていますが すでにAMGのモデルが使われていますが、これらの新しいパートナーは、航空宇宙部品という点でより要求が厳しいことは間違いありませんし、あるいは、3Dプリント技術の経験を自社のケーシング技術に応用することも可能で、これも楽しみです。
